コラソン de メロン〜平成枯れすすき

cdm公式サイト田中誠監督。井上和香西川貴教。そこはかとなく「昭和枯れすすき」から連想して「平成枯れすすき」という雰囲気。
貧しさに負けた
いえ 世間に負けた
この街も追われた
いっそきれいに死のうか
力の限り 生きたから
未練などないわ
花さえも咲かぬ 二人は枯れすすき

泉(井上和香)とヒロミ(西川貴教)の出会いはラーメンのチャーシューがたまたま1人分しか残っていなかったという100円分がきっかけ。百円ショップ的愛が哀愁を誘うのだ。ただ「昭和枯れすすき」と異なるのは、世間に負けたという敗北感もなく、死のうという気力さえなくなったような精神的脱力感が際立つ。
貧しさと闘って負けたことに付き纏う筈の悲惨さがすっぽり抜け落ちている。ヒロミは仮病で泉がせっせと貯めたなけなしの貯金を平気で取ってヘリコプターのラジコンは買うは、高級メロンを買わせるは、看護婦を家に入れるは、自己中、おバカ丸出しの怠け者だが、ギリギリになると泉を支えようとする。社会的文脈がおよそ欠落している。
健気な泉も、根底にある種の投げ遣り感があり、ガードの甘さから会社はクビになるはで、およそ保身という感覚が欠落している。
一番哀れを誘うのはヘビースモーカーのヒロミのために街を歩き回ってまだ吸えそうな捨てられたタバコの吸殻を拾いまくっていたことをたまたま、今は「勝ち組」と結婚したらしい同級生の女性に見つかってしまうシーン。高校時代は泉がモテモテで勝ち組と結婚していても不思議でなかったのだが、泉はおよそ自分自身の世間相場の価値の高さに無関心、無自覚だったようだ。自分自身の空気読めないというか。
世間知らずでこうなってしまったと言ってしまえばそれまでだが、泉にはそのことを後悔する気力すらなく病に伏してしまう。ふと気が付けば、ホームレス寸前。ワーキングプアからホームレス? しかし2人とも転落しているという感覚すらなくなっていることで似た者同士で、並んだ安物のメロンアイスのペアが2人を象徴している。その行き着く先は見えているようで見えない。
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