愛おしき隣人 You The Living

Ytl公式サイトスウェーデンロイ・アンダーソン監督、ジェシカ・ランバーグ、エリザベート・ヘランダー、ビヨルン・イングランド。北欧のとある町と言っても、実質ストックホルムだろう。北欧版“壊れた”人々の住む町に何かが襲う。
イントロで、最初の住民が貨物列車の轟音で昼寝から目を覚まし、「悪い夢をみた。爆撃機が襲来する夢だ」と独り言を言う。
てっきり、第二次大戦中の記憶に夢でうなされたと勘違いさせられる。実際に、パーティで食器を落とさずにテーブルクロスを取り去る余興を披露しようとして200年物の食器を台無しにした別の男が電気椅子で処刑される場面では、テーブルにナチスハーケンクロイツのマークが露になる。裁判にかけられた男を裁く裁判官は生ジョッキを飲みながら判決を下すのだから。
とはいえ、何といっても、映像全体にただよう弛緩した雰囲気が独特。日本的に言えば、滑りまくりの寒いギャグのようなショートショートの連続だ。けれど、それをラストまで続けると滑りまくりが通奏低音になってしまい気にならなくなる。映像も夏が去った北欧の空のように暗い。これでもかこれでもかと暗さ辛さを露出狂気味に強調しているようで、それに慣れるまで正直辛いものがある。
女の子はロックスターと結婚する夢を見るのだけれど、その夢舞台は古びたアパート列車。最初のエピソードといい、映画そのものが列車化させられているような雰囲気があって、それぞれの車両にそれぞれの人生があるような。
ラストオーダーの時に「明日もあるよ」と言いながら、ラストオーダーの時ばかり賑わうバーってのは、明日には希望がないということとしか思えない。
男も女も平均年齢が高く、メタボ気味か、老人痩せかどっちかで、1人は会議中に突然死する。葬式で歌われる歌がなかなか良く、雲の向こうに涙のない世界があると歌う。
けれど、雲の向こうから現れたのはナチスのものではなく、アメリカのB52爆撃機の大編隊。一体、この夢の暗示するものは何なのか。戦後と今の間にある不幸の記憶と不安の未来。人生はくだらないもので成り立っているけれど、くだらないことがそのまんま受け入れられにくいストレスが充満しているような。
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