クライマーズ・ハイ

climbershigh公式サイト横山秀夫原作、原田眞人監督、堤真一堺雅人尾野真千子高嶋政宏山崎努。2005年日航ジャンボ機墜落20周年でNHKがドラマ化したのを映画化。正直、NHKの方がまだ臨場感あったし、意味のない脚色で余計に散漫になっている。
3年前の夏、NHKのほかにTBSでも「ボイスレコーダー〜残された声の記録〜ジャンボ機墜落20年目の真実」を放映していたが、こちらの方が断然良かった。高濱機長の最後の絶叫「頑張れ」「気合を入れろ」「ウワアァ」を記録したボイスレコーダーの公開をめぐるドラマだった。
どうせ映画化するなら、こっちの線を期待していた。横山秀夫のは、所詮地方紙のコンプレックスや意地、葛藤、拘りを延々と見せられるだけで、肝心の事故は隅に追いやられている。こんなものは世界史上最大の航空機事故の前では、ただただ卑小に見えるだけだ。というか、現実問題として、未曾有の事件のさなかにこんな類型的な子供じみた社内抗争している暇ないので、見ていてあほらしくなる。
どこにでもいそうな偏屈なスケベ社長、切れやすく優柔不断な全権デスク。こんなのを中心にすること自体、映画自体が優柔不断だ。岩登りと重ねあわされても、結局、それが何、で終わる。航空機事故と無関係に社員が2人も死ぬなんて何の意味があるのか。一体、あのニュージーランド、何の意味があるのか。よほど脚本がへたれじゃないとこうはならない。
もう、思い切って横山秀夫から離れ、瀕死の事故機の機内、コックピットの様子を描写するくらいの大胆な映画にして欲しかった。再現できるだけのデータはもう十分そろっている。9.11テロでも、ペンシルバニア州に墜落したユナイテッド航空93便の機内でテロリストと乗客が死闘する様子を再現した映画「ユナイテッド93」は既に作られている。やはりまだ遺族への遠慮があるのだろうか。
冒頭にエベレストを越えるツルのエピソードがあるが、これ、「落ちたツルマーク」を暗示したいのだろうか。だとすれば、つまらない揶揄だ。
個人的に興味が持てたのはJR土合駅谷川岳登山客用に造られたトンネル内駅。エレベーターはなく地上に出るまで500段近くの、多分日本一長い駅階段を昇らねばならない。私も段数知らずに下車して階段を見上げ、はるか上にボンヤリ地上の光が差しているのを見て絶望的気分になったことがある。フーフー言いながらも登りきったけれど。心臓の悪い人は絶対下車してはいけない駅。
けれど、元全権デスク、60歳過ぎたといえ、これくらいで大儀そうに登っているようでは、とても岩壁制覇は無理と思うのだけれど。
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