庭から昇ったロケット雲

nnrk公式サイト。原題:The Astronaut Farmer。マイケル・ポーリッシュ監督、ビリー・ボブ・ソーントンヴァージニア・マドセンブルース・ダーン、ティム・ブレイク・ネルソン、ブルース・ウィリス。夕陽と紅葉、暮れなずむ日々。逆光のショットの多用。夢の背景はもの寂しい。
テキサスの農場主チャーリー・ファーマー(ビリー・ボブ・ソーントン)の父親はピストル自殺している。それで宇宙飛行士の夢を断ったわけだが、これが無茶な夢への文字通りの引き金になってしまう。
父親の内部に突っ込んだ弾丸。チャーリーは発想を逆転させ、自分自身を弾丸の内部に突っ込もうとする。つまり自家製人間宇宙ロケット。これは一見夢物語のようでいて内と外が真逆の裏返しの自殺行為だ。夢に見せかけた自殺願望の物語だ。背景がもの寂しいのはそのためだ。
もちろん、「現実的」に綿密に計画を遂行していて、成功を前提にしているように見えるが、どう見てもそうは見えない。チャーリーだって本当に狂っているわけじゃないから、それくらい分かっていたろう。もしや一発逆転も捨ててはいなかったろうが。
それにしても、最初の失敗はアメリカがソ連スプートニクで先を越された頃の度重なる打ち上げ失敗を彷彿とさせる。あの頃のアメリカはソ連のロケット外交に怯えていて必死だった。
恐らくチャーリーの行為は当時大統領になったジョン・F・ケネディの有名な演説「祖国があなたに何をしてくれるかを尋ねてはなりません、あなたが祖国のために何をできるか考えて欲しい」と被らせているのだと思う。チャーリーは元宇宙飛行士(ブルース・ウィリス)に「スペースシャトルに乗せてやるから無謀なことをやめろ」と説得されても「乗り合いバスに乗りたくない」と断る。
NASAやFBIもやめさせようとすれば簡単に止めさせられたはずだが、なぜか監視しているようで放置しているように見える。実は密かに期待していた感すらある。
当然、今の鬱なアメリカが反映されており、チャーリーの父親とは実は暗殺されたケネディではないかとさえ思わせる。
ファーマー家の息子シェパード(Shepard)は、アメリカ人として初めて有人宇宙飛行に成功した宇宙飛行士Alan Shepardへのリスペクト。通常のShepherdじゃなく、スペルもあわせてある。娘のStanleyはStanley G. Loveだろうか。あるいはStanley Kubrickか。男の名前なのに変だと思った。それからHalはあのHALだろう。
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