もともと原理的には森林はCO2を吸収する

武田邦彦(中部大学):ふたたび、森林はCO2を吸収するか? もともと原理的には森林はCO2を吸収しない。それは、樹木の体は、成長するときに空気中のCO2からの炭素(C)で作り、それと同じ分だけの酸素が空気中に放出する。
もともと原理的には森林はCO2を吸収する。それは、樹木の体は、成長するときに空気中のCO2からの炭素(C)で作り、現に森林は存在しているからだ。
もともと原理的には森林はCO2を吸収しないのなら、そもそも森林は地球上に広がらなかったはずだ。武田邦彦氏は森林は単純再生産と言っているのだから、これはおかしい。これを、
もう森林は世界中の森林が育つ土地を覆い尽くしてしまったので、原理的には森林はCO2を吸収しなくなった。
というのなら、まだ分かる。けれど、そうなると、腐植土や泥炭、化石燃料、あるいは海底のメタンハイドレートが存在する説明がつかなくなる。
森林は閉鎖系で自己完結しているわけではない。開放系なのだ。だから、
成長するときに空気中のCO2からの炭素(C)で作り、それと同じ分だけの酸素が空気中に放出する。
というのは事実を無視した机上の空論だということが分かる。同じ事を小宮山宏東京大学学長も本で書いていたことを覚えている。最近になってやっと「今頃定説覆された森林の炭素吸収」と相成ったのだから、世の中、本当にいい加減なものだ。
世の中、本当にいい加減なものだ。
こんなことは武田氏ご本人も実はご存知のはずで、「北方の森林は微生物の活動が不活発なので、約3分の1のCO2は固定されると言う結果である」などと書いている。要は支離滅裂なだけなのだ。ちなみに全体で3分の1も吸収するってのはいくらなんでも多過ぎると思うけれど。
シベリアでは火災で消失する森林は一年で1000万ha程度だが、この森林火災の分のCO2を補うためには、10億ha程度の健全な森林がなければならないが、実際にシベリアの森林面積は2億5000万haしかないから、到底、火災によって増えるCO2を回復することはできない。
これは
差し引き86g/m2
というのを逆算して10億haを掛ければ8.6億トンのCO2が吸収されるからということだろうか。けれど、火災が起きれば、その土地はビフォーアフターで森林の生育条件がかなり違ってくる。火災になれば、通常、太陽光に晒されて土壌が温まり、腐植土の分解が早まる。一方、植物は太陽光線を浴びて生育の若い木が育つ。こんな単純計算ではどうしようもないだろう。それから熱帯林はCO2出しっぱなしのような書き方だが、ならば、そもそも熱帯林は地球上に存在し得ない。寒帯林と違って、熱帯林の新陳代謝が激しく、森林の外部に放出される炭素量は寒帯林よりはるかに多いことは容易に分かるはずなのだが。一体、アマゾン川はどれだけの有機物を海洋に供給しているのか想像できないのだろうか。そういう炭素循環の結果、二酸化炭素排出量の約半分は、海洋と森林トータルで吸収されている。
森林によるCO2の吸収とか放出は、増えるにしても減るにしても、せいぜい年間10億トンのレベルだ。これに対して世界各国のCO2排出量は2000年に230億トン
というのは、基本的な炭素循環を無視した「感情的意見」だろう。どうすればこんな計算結果になるのか不明だが。
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