OECD「日本での格差縮小」は2003年現在のデータらしい

Reuter FACTBOX: OECD highlights a growing gap between rich and poor

JAPAN - Income inequality and poverty have declined in Japan over the past five years, reversing a long-term trend toward greater inequality. 日本の所得格差と貧困は過去5年でそれまでの格差拡大傾向から反転して緩和した。

格差社会解消かと思いきや、よく見ると何か変だ。
今回OECDの発表したGrowing Unequal? Income Distribution and Poverty in OECD Countriesのデータmid-2000sというのは2005年のように思えるが、こっちの日本のデータを見ると、2003年になっている。グラフは貧困率の1985年から2003年までの推移で、確かに2000年ごろをピークに最後の2003年はわずかに貧困率は下がっている。1998年に比べて2003年には所得格差もわずかに解消したのだろう。しかし、2003年現在じゃ参考にならんだろう。
他の30国を見ると、ほとんどが2004年で、日本、オーストラリア、ニュージーランドだけが2003年になっている。本当に2005年のデータを使っているのはアメリカとカナダ、デンマークぐらいだ。世の中、ドッグイヤーで乱高下している昨今、2年の違いでもえらい違いだろう。
池田信夫blog:「格差社会」の幻想にリンクされているCOUNTRY NOTE JAPAN (IN JAPANESE AND ENGLISH): JAPAN 日本を読むと、

一世帯あたりの所得は過去10年で減少した。低所得層にとっては1990年代後半が最も困難な時期であったが、高所得層は2000年代前半に所得の減少を経験した。

とある。株で言えば、2000年のITバブルの後、当該の2003年には、日経平均株価バブル崩壊後最安値を付けた年(今のところ)。金持ちはキャピタルゲイン、キャピタルロスで所得が変動するし、事業でもぼろ儲けぼろ損しているだろうから平仄が合いそうだ。
1998年には中流が崩壊したという議論があったが、2003年には森永卓郎氏の「年収300万円時代を生き抜く経済学」が出版されている。日本で格差社会が本格的に問題化されたのは2005年9月に発行された三浦展氏の「下流社会〜新たな階層集団の出現」がベストセラーになったのがきっかけだと思う。
ということは、今回発表のデータは格差社会が問題化する前のデータで、その後のホリエモン騒動のような拝金思想とか、勝ち組負け組み、ワーキングプア問題などは織り込んでいないことになる。
恐らく、2003年以降、再び格差が拡大し、実際には10年前以上に格差が拡大しているのは想像に難くない。もっとも、今年は国際金融危機で再び富裕層の所得が急降下し、相対的に日本では「格差縮小」していると5年後のOECDはコメントしているかもしれないのだが。
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