その日のまえに

sonohinomaeni公式サイト重松清原作、大林宣彦監督。南原清隆永作博美筧利夫今井雅之宝生舞原田夏希柴田理恵窪塚俊介風間杜夫峰岸徹宮沢賢治永訣の朝」などを下敷きにした死に逝く妻への挽歌。偶然か最近亡くなった峰岸徹も少し出ている。
マンションの夫健大(南原清隆)の仕事部屋の壁を青空色に塗る妻のとし子(永作博美)。まるで内と外が逆転してしまうかのような印象がある。そのためにか、外に出る暗い階段は夫の内面にある恐怖そのものになってしまう。
それは病院の外階段にも当てはまり、外は過去とつながっている。
2人が結婚したてのころの浜風駅近くのアパートだって、どうもその古さからたかだか18年前とは思えない。そのまんま宮沢賢治の世界につながっている古さだ。手紙を送る「今」の部屋の住人って恐らく宮沢賢治の妹トシ=宮澤とし子(原田夏希)だろう。トシは日本女子大学校生として上京中、病にかかり、賢治の看病を受けている。
海岸の「かもめハウス」や喫茶店「朝日のあたる店」だってそうだ。宮澤とし子がウェイトレスしているのだから。
死の直前に見ると言われる走馬灯を映像化して重ね合わせたようなシーンが連続する。何か童話のようで大人の死のリアリティに欠けると思える向きもあるかもしれないが、逆だろう。死が近づくと心は童に帰るのだと思えば、むしろリアルだ。ただ、あの駅長さんは、ちょっと悪乗りだろうか。あそこまでやる必要があったのかどうか。
気丈に振舞うとし子が明るいだけに、その暗鬱たる裏面が余計に暗くなる。演じる永作博美が事務的にこまめに死への準備をこなせばこなすほど、死への恐怖が浮き彫りにされ、ただの明るさではなくちゃんと裏側に死の影を滲ませた尋常でない笑顔作りをしている。それに合わせた夕陽による陰影が効果的。
兄夫婦よ、車でのんびり来ずに新幹線に飛び乗れよ、と思ったが、蒸気機関車と大型ジェット旅客機の対比から中途半端な新幹線は余計なのかもしれない。
部屋の青空に飛行機雲は描かれない。それはとし子が逝く事で仕上げられるのだろう。というか、飛行機雲はすぐに消えてしまうのだ。「忘れてもいいよ」と言っていたのだから。
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