WALL・E/ウォーリーと古代エジプトのスカラベ

walle0公式サイトアンドリュー・スタントン監督、 フレッド・ウィラード。29世紀、金属廃棄物を立方体に固めて積み上げたスカイスクレーパーが林立している。まるで金属の蟻塚のようだ。その蟻の役割をしているのがたった1台残った廃棄物処理ロボット、ウォーリー。WALL・Eとは、多分、電気(E)壁作りロボットなんだろう(本当は違う)。この建物、実はエンドロールと見事に結びついていた。
鉄骨系ウォーリーと特殊な金属で電磁石でパーツを体の形を構成しているイヴ(写真左側)が一緒に並ぶと、なぜか優男と可愛い女の子になってしまう。性別なんてあるわけないのに。
walleウォーリーは基本的に“蟻塚”を作るようにプログラムされていると思ったら、そうではないことが終盤で分かる。彼は途中から廃棄ロボットであることをやめて、廃棄物リサイクル・ロボットに進化したのだ。蟻から自立的なロボットに進化したのだ。多分、高層蟻塚は周囲の残った高層ビルを真似てウォーリーが700年間黙々と建設していたのだ。ロボットが自らリサイクルするという発想は、ウォーリー自身が自分で自分のパーツをスペアして自己修復するようにプログラミングされ、それが派生して起きた行動だろう。その結果、さらに「ハロー・ドーリー! 」のビデオをたまたま再生し、イヴとの出会いのための“自意識”は準備された。また、宝石箱を点検して中の宝石は捨ててガラクタであるはずの箱だけを保存しているところは目立たないが見逃せない。
イヴは、なぜか予告編とは微妙に違う。イヴは宇宙船にさらわれたのではなく、イヴ自身が定期的にやって来る地球探査船の地表調査ロボットなのだ。一定期間滞在すると、回収されるだけなのだ。それにしても、あの探査船はアポロを打ち上げたサターンロケット並みの大きさで、しかもハイパー・ジャンプできるはずなのに、離着陸時はかなり原始的なガス噴射式だ。イヴ自身は空中浮揚できるのに。そのサターンロケットが小さく見える母船は元々宇宙観光豪華クルーズ船。実は観光のつもりが地球が環境破壊で壊滅してそのまんまスペースコロニーになってしまった。
そして、ここでも「汚染」されたロボットはなぜかウォーリーたちの味方になってしまうのは、イヴだけではないことが分かる。多分、ロボットを中央制御するコンピュータから「汚染」によって独立できるためだろう。無機的な清潔さからは何も生み出されず、地球の持っている猥雑さ、有機物という「汚染物質」がロボットに自立心を与えるキーだったということなのだろう。ウォーリーとイヴの船外ダンスも実はそれを見ている人間たちを覚醒させる役割を担う「汚染」的光景なのだ。ちなみに、このコンピュータ、人相風体から見て明らかに「2001年宇宙の旅」のHALなんだけれど。代々の船長の横に必ず見張るようにいるんだけれど、船長が代を重ねるにつれてどんどんメタボ化しているのは低重力のためだけではなさそうだ。限りなく赤ん坊と大人の体形が変わらない。
scarabeeエンドロールは一気に古代エジプトの壁画になってしまう。つまり、最初に出て来る高層蟻塚は、はからずもピラミッドになってしまったわけで、ウォーリーとイヴは文明再生の神話の神々になってしまう。
実は、これ、かなり深い意味がありそうで、古代エジプトでは昆虫のスカラベは再生、復活の象徴として崇拝されていて壁画→にも描かれているが、要するに糞を転がして運ぶフンコロガシだ。つまり元祖リサイクル神だ。ウォーリーはこのスカラベをモデルにしている気配がある。フンコロガシならぬテツコロガシか。
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