チェ 28歳の革命
公式サイト。原題:Che The Argentine。スティーヴン・ソダーバーグ監督、ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、フランカ・ポテンテ、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ジュリア・オーモンド、ロドリゴ・サントロ。チェ・ゲバラ役のベニチオ・デル・トロを見るのは「悲しみが乾くまで」以来。
ジェリーも弁護士だったが、チェも医師で裕福な家の出。革命のリーダーにしろ、テロのリーダーにしろ、むしろ裕福な家庭のインテリというパターンはチェも例外ではない。かつてビートルズのジョン・レノンに「世界で一番格好良い男」と言われているのだけれど、17歳の写真(←)はまるでポール・マッカートニーだ。彼が後にTシャツになることも含め、革命家と同時に資本主義的ポップスターの要素も内在させていたように思える。
映画でも、彼の観念的な世界観と現実的な部下との間での齟齬がそれとなく表現されていた。
例えば、ラストで部下が盗んだピカピカのアメ車をぶっ飛ばして来たのをとがめ、車を返し、ジープかバスで来い、なければ歩いて来いと命令する場面。まだハバナへ進行中なので、アメ車でそのまま行った方が合理的に思えるのだけれど。もっとも、これも、道徳的であれ、というよりもチェの政治的戦術なのかもしれない。ピカピカのアメ車でハバナ進撃じゃむしろ民衆から反感を持たれる、という一瞬の反射的判断なのか。
また、ゲリラ志願する少年に「まず読み書きを覚えろ。それも革命だ」と諭す。そりゃそうなのだけれど、そんなこと言っている場合だったのかとも思える。
キューバ革命達成後、次の革命の地を求めてキューバを去るが、映画では触れられていないが、ゲバラは革命政府首脳になった時に、後ろ盾になったソ連を「ソビエト帝国主義」と罵倒しており、今で言えば空気読めない、KY的なところがあって煙たがられて出た側面もあるようだ。基本的に良家の息子さんだ。
後の妻となるアレイダ(カタリーナ・サンディノ・モレノ)との出逢い。サンタクララの道案内をチェに申し出るが、一度その場で断っているのに夜になってジープで乗り付けて依頼する。これ多分、思い直して「いい女だったなあ」と追いかけたんだろう。後にハバナ進行で「ハバナの道案内してくれ」と頼むが、「ハバナのことはよく分からないけど」と答えるアレイダ。これは実質プロポーズの台詞のようだ。まあ、表向きは革命の同志として認めたという具合なのだろうけど。彼が1964年の国連演説のためにニューヨークに来た時のインタビューで「個人主義」を否定する場面があったけれど、この映画でも、表向きとは別に言外に彼自身の「個人」が奥床しく表現されていたような。
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