レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

revolutionary road公式サイトサム・メンデス監督、レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットマイケル・シャノン、キャスリン・ハーン、デヴィッド・ハーバー、キャシー・ベイツ。「タイタニック」はヨーロッパからアメリカへ、そして今度はアメリカからヨーロッパへ、逆タイタニック。沈むのも今度はケイト・ウィンスレット。邦題「燃え尽きるまで」は実体と合ってない。燃え尽きられなかった悲劇だというのに。
1950年代のアメリカ。お互いに特別な存在と思い結ばれるフランクとエイプリル。父親のような平凡なサラリーマンになりたくないと思っていたフランクは気が付けば父親と同じ会社に勤め、一種の戦争後遺症で戦争で体験したような身震いするような実感のある幸福を求めている。エイプリルは女優をあきらめ、曖昧な形のない「栄光」を求める。「パリ」はその自堕落な記号でしかない。
revolutionary  road2そして、この人ジョン(マイケル・シャノン→)。天使の囁きなのか悪魔の囁きなのか、2人の無意識の欲望を体現したようなこの人は、数学の俊才だったのだが、電気ショック療法で数学の知識を奪われた、夢を奪われた抜け殻のような存在。「午後の曳航」の栄光を捨てた大人を憎む少年がそのまま大人になったような人だ。この人の存在で映画はサイコホラーの気配さえ帯びる。
エイプリルのエイプリルフールも、一瞬ホラーなのかと思わせてしまうほど際どい表現。彼女の夢と同様、彼女の悲劇すら夢の中の世界の如しだ。よくぞまあ、精神の陥没を表現したものだ。
フランクの勤めるKnox Business Machinesって、どう考えてもInternational Business Machines(IBM)のもじりだろう。映画では真空管と語られていたけれど、同時期にトランジスターのコンピュータを発売、コンピュータ業界の巨人となる足がかりを得ている。
ということは、2人のストレスはその後の(恐らく実感の幸福が希薄な)コンピュータ社会への拒絶反応としても見える。実は未来社会に適応できたのは、地に足が着いた隣人たちで、挫折したエイプリルも、一人取り残されてニューヨークで暮らす寂しそうなフランクも不適応組だった。
レオナルド・ディカプリオケイト・ウィンスレットのコンビの成長ぶりも見事だけれど、脇を固める俳優陣も彼らを凌ぐぐらいの秀逸で、最初から最後まで映像が引き締まり、気が抜く暇もない。実はラストを飾るのはキャシー・ベイツの演じる不動産屋のおしゃべりで、夫はウンザリして補聴器のボリュームを低くすることで終わる。別の人が言っていた様に「もう2人の夢は忘れよう」と言わんばかりに。そういえばこの映画を通して愚痴が通奏低音のように鳴り響いていた。
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