映画「誰も守ってくれない」のこれはひどい度

daremamo公式サイト君塚良一監督、佐藤浩市志田未来松田龍平柳葉敏郎石田ゆり子佐々木蔵之介木村佳乃。予告編では殺人容疑者の少年の妹沙織(志田未来)が喚き散らしていたので少し引いたけれど、実は喚くのはそのシーンだけだったので安堵した。しょっちゅう喚かれると興趣が殺がれ台無しになってしまうから。
小学生姉妹殺人事件の容疑者少年の夫婦が世間の目を避けるため、いったん離婚し、すぐに姓を逆転して再婚手続き、その場には家庭裁判所調停員まで控えていてあっという間にお役所仕事がてきぱきと完了する。こんなのアリと唖然として「お兄ちゃんだけ元のままなの?」と尋ねる沙織。犯罪そのものよりこの手際の良さがなぜか笑える。有無を言わさず加害者家族を保護するというより事なかれ主義的にコントロールする日本のお役所の優秀さを見せ付けられる。正に官治政治、民主主義のかけらもない日本の現状がコミカルに活写されている。
そこまでは良かったのだけれど、「ネットの暴走」は暴走していて、知る限り加害者少年家族の写真晒し上げなんて見た事ない。しようものならネットでそれ自体が非難轟々、血祭りにされるがリアルな世界なのだろうけど、そういうシーンは全く撮らず、ひたすらネット=悪の暴走というのは勉強不足なのか、認識不足なのか。社会的事件に関するネットの暴走のほとんどは義侠心の暴走だろう。
そもそも妹を執拗に追いかけるマスコミなど現実には有り得ない。「家族も同罪」などという記者の方がネットで「これはひどい」で祭りになり、さらし上げになるだろう。妹を執拗に追いかけるネットユーザーも非現実的だ。ましてやラブホのネット盗撮生中継はやり過ぎだろう。沙織のボーイフレンドを鬼畜に仕立てるのも常軌を逸して品性が欠けていてむしろ不快だ。これじゃこんな鬼畜と付き合っていた妹が馬鹿に見えるが、どう見ても馬鹿に見えない。
一番暴走しているのはこの映画の脚本ではないか。世間のネットに対するイメージに媚びて面白ければ何してもいいというものではない。
一番まともそうな沙織風に言わせれば「何でこれがモントリオール映画祭脚本賞受賞なのよ!」って感じだった。
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