起業家志望はオジサン世代の見果てぬ夢だったのかもしれない

日本生産性本部の発表した新入社員意識調査のグラフを見て起業家志望が小泉政権の時も、景気拡大の時も一貫して減少していることに意外性を感じた。
2005年9月の小泉圧勝衆院選も、20006年初めのホリエモン証券取引法違反容疑逮捕事件も、それに続く同年6月の村上ファンド村上世彰インサイダー取引容疑逮捕事件も無関係に減っている。
データが2003年からなのでなんとも言えないが恐らく、起業ブームはITバブルが崩壊した2000年をピークに一貫して右肩下がりのようだ。2009年は14.1%だが、2000年調査していたとしていたら、恐らく40%とを越えていたと思われ、今は3分の1になったと考えられる。
とにかく景気拡大であろうが、現在の景気後退であろうが一貫して減っているのだ。
とすると、小泉改革も景気拡大も全く何の関係もなく、ITバブルの徒花だった可能性が高い。元々、起業したいが2003年時点で3人に1人に近い数字だったのが異常だったのかもしれない。所詮小泉改革も、ホリエモンブームも上滑りしていて、若者は意外とクールだったことが分かる。そりゃそうかもしれない。景気拡大で恩恵を受けたのは既存起業の正社員であり、その他の起業志望者には実は無関係であったということになる。そう言えば、新興企業ブームは2003年から2004年にかけて一時ぶり返したが、実はいかがわしいのが多数あると気付かれ始めたのもこの頃だ。
この事実を見ると、
池田信夫blog:メシアニズムなきメシア的なもの

かつてのマルクス主義に代わる現代のメシア的な希望は、たぶん起業だろう。ホリエモン村上ファンドに「反体制」のにおいがあったのは偶然ではない。しかし彼らは国家権力によって圧殺されてしまい、物語のまったき不在が全面的ニヒリズムを生み出した。

というのは、現実の若者には全く説得力がないことになる。ホリエモン村上ファンドに「反体制」のにおいをかいでいたのは、実は若者ではなく、もっと年配世代ではなかったのか。ホリエモンブームの頃、堀江貴文氏にエールを送っていたのは、むしろ全共闘世代であったと記憶する。その中にはホリエモンを応援した竹中平蔵氏や小泉政権自民党幹事長・武部勤氏も含まれている。
何のことはない。起業家に夢を投影させていたのは、皮肉にもノン・ワーキング・リッチ風オジサン世代だった可能性が高いのだ。現実には若者は、池田氏が嫌う既得権益に守られた正社員を「勝ち組」と“現実的”に考えているのかもしれない。あるいはそれも勘違いで、実は正社員にこしたことはないが、だからといって非正規は不幸という思いも薄いのかもしれない。あまり社会的地位に頓着しないというか。
とすると、「希望」を喪失しているのも、実は若者ではなくオジサン世代なのかもしれない、ということにはならないか。小倉秀夫氏の「若者は結構前向きに生きている。」という説は存外当たっているのかもしれない。実は私自身、あまり暗い顔をしている若い人って案外見かけないなあ、と思っていた。「日本の衰退」に一番恐怖を感じているのは若者ではなくオジサンなのかもしれない。若者は「日本の衰退」すら相対化し、そんなの関係ねえ、と冷めているという点である意味進化していることになる。
Clickで救えるblogがある⇒人気blogランキングにほんブログ村 経済ブログへ