早期生前贈与優遇制度の創設を

日本人の金融資産が高齢者(60歳以上が全個人金融資産の6割)に偏っているのはつとに知られているが、その原因は、単に高齢化が進んだだけではなく、それを相続する相続人自体が高齢化し、相続税の悪循環が起きていることが大きな要因となっている。
現在の平均寿命は83歳くらい。1970年だと、それが70歳程度だった。子供を産む年齢の平均が30歳前後(1970年は28歳くらいと想定)すると、今では相続する平均年齢は53歳だ。1970年だと42歳になる。
53歳となると、まずおおむね子育ては終わり、子供も大学を卒業して一人立ちの時期で、やっと経済的余裕が出始める時期。こんな時期に相続しても、むしろ遅すぎる。なんで教育費が一杯かかる時期に相続できなかったのか、と思う向きはあるだろう。一方の1970年は42歳なので子供は中学生の頃。まだこれから教育費をたっぷり捻出しなければならない時期だ。住宅ローンだって残っているだろう。その時に相続できれば有り難味が全然違う。生活に余裕が生まれる。
一方、53歳で相続受けても、相対的に金銭的に余裕があるので、使い道が狭められている。しかも年齢を重ねれば重ねるほど、肉体的に衰えているので消費能力も衰える。まあ、年取って病気になった時に備えようとか、なぜか年を取れば取るほど将来に備えて蓄えるというパラドックスめいたことになる。しかも、この傾向はますますエスカレートするばかりだろう。
その結果、相続は高齢者から若い世代へと受け継がれるのではなく高齢者から新入り高齢者に受け継がれることが多くなる。個人の金融資産が50歳、60歳以上の中で悪循環を起こして、それ以下のもっとカネが必要な世代にちっとも落ちてこないメカニズムができてしまったのだ。人体に喩えれば血流が悪くなり、新陳代謝が小さくなってしまったようなものだ。
では、どうすればよいか。贈与税基礎控除の引き上げだろう。現在は年110万円だが、これを大幅に引き上げてせめて数百万円にしてはどうか。例えば、生前贈与する場合、被相続人が85歳以上の場合200万円まで控除、80歳以上〜84歳は300万円、以下75歳歳以上、400万円、70歳歳以上500万円、65歳以上600万円、60歳以上700万円、60歳未満800万円、という具合に生前贈与時の年齢が早ければ早いほど優遇する。言わば早期生前贈与優遇制度だ。
こうすることで、高齢者の資産が40歳代、30歳代にトリクルダウンするケースが増えるだろう。
日本は折角1500兆円もの個人金融資産があるのに、若い世代を中心に貧困が広がっている。バラマキをするなら高齢者から若い世代へのバラマキ政策しかない。60歳以上の消費性向は30歳未満の消費性向とほぼ同じ。消費性向の高い50歳未満の世代に資産を移すことで全体の個人消費は高くなる。これを実施したら民主党がやろうとしている子ども手当よりもずっと効果がありそうだし、第一、税金を使う必要がないので、財政の心配せずに日本を活性化できる。どうせ相続税は例外的に大きな資産を持っている人にしか実質徴収されないのだから、若い世代に使ってもらったほうがよっぽどいい。
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