「ブラック・スワン」なんて勝間和代本と大して変わらない

欧州の「ブラックスワン」は日本に飛来するか(池田信夫)

これはギリシャだけの問題ではない。PIIGSをはじめ各国政府も、スワップCDSなどさまざまな証券化商品を使って政府資産を運用しており、その多くが簿外になっている。さらに年金債務など公式の統計に出てこない債務も多いため、疑心暗鬼によってPIIGS国債価格が下がる。これはサブプライムローンのときとよく似ている。
このように誰も予想しなかった危機が突然、表面化する現象を、ナシーム・タレブはブラック・スワンと呼んだ。それが危険なのは、ふだん意識していなかったため、いったんブラック・スワンが登場すると、みんながパニックになってしまい、2008年の「リーマン・ショック」のような群衆行動が起こるからだ。政府に隠れ債務があるというのは誰も想定していなかったリスクであり、それが衝撃を大きくしている。

この説明だと想定外の出来事はみんなブラック・スワンになってしまう。だからわざわざ「ブラック・スワン」などと言う必要ない。事実、ギリシャの慢性的財政問題なんて以前から問題視されてきたのだから想定外とすら言えない。著者のタレブ自身、こんなのはBlack Swan Theoryではなく、

Taleb never uses the term "Black Swan Theory"; instead, he refers to "Black Swan Events"

と言っているらしい。それをまた、
ブラック・スワンは、

たぶん10年に1冊ぐらいしか出ない、世界経済危機を予告した本だ。経済を破滅に追い込むのは、金融工学がヘッジしたと称しているリスクではなく、予測不可能な不確実性だ、という本書の警告をアメリカの金融当局が真剣に受け止めていたら、こんなひどいことにはならなかったかもしれない。

と持ちあげている人もいるのだが、まあ、これは本のアフィリエイトのための誇大宣伝としても、一応自称経済学者らしい人の言葉としては恥ずかし過ぎる。
ブラック・スワン」なんて実際には毎日毎時毎分毎秒起きている事象からジャーナリスティックに大きなイベントだけを恣意的にピックアップした“人為的現象”に過ぎないから、そりゃあ何だって予告したことになる。要するに隠ぺいされたことが明るみに出れば何だってブラック・スワンなのだ。こういう通俗啓蒙本に過ぎないものを「10年に1冊」って言うのは勝間和代並みに痛いマーケティングとしか言うほかない。言い換えれば目糞鼻糞を笑う類なのだ。
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