消費税還付で消費者金融の実質金利が急落しないか

消費税を低所得者へ還付 首相、年収200万〜400万?(産経)

 菅直人首相は30日、青森市で演説し、消費税を増税した際の低所得者対策として「年収200万円とか300万円の人に還付する制度や食料品などの税率を下げることを相談したい」と述べ、還付制度や、生活必需品の税率軽減を検討していることを明らかにした。
 この後、秋田市で「年収が300万円とか350万円以下の人には消費税(増税)分全額を還付するやり方もある」と発言。山形市では「年収300万〜400万円以下の人にかかる税金分は全額還付する方式を話し合う」と述べ、対象年収を徐々に引き上げた。

これを受けた投資十八番:「消費税全額還付」が現実的でない理由

 「全額還付」ということは、ある人が物品を買ったりやサービスの提供を受けた際に支払った年間合計消費支出額を完全に把握することが絶対に必要となります。つまり、レシートや領収証を全て保存しておかなければならないということです。これはなかなか大変です。個人事業者や会社を経営している人であれば慣れたものでしょうが、子ども(親が申告?)から老人までの全て国民がレシートを集めなければならなくなるわけですが、そんなことが現実的に可能なんでしょうか。また、レシートを無くしてしまったら還付の取り扱いはどうするつもりなんでしょうか。
 こうした作業に費やされる労力が、全国民的規模となるとどれだけの無駄な時間になるのかを考えるべきでしょう。それに、基本的に消費税還付措置が導入されれば、どんな制度を取ろうとも確定申告(なりそれに準じる方法)は義務になるでしょうから、膨大な数になるであろうレシートの不正確認等の行政コストも馬鹿にならないです。

同じことを思った。レシートもらえる店ならまだいいけれど、自動販売機なんてレシート出て来ない罠、とか。
更に菅さんの「全額還付」という意味が年収の範囲とともによく分からない。税率を10%にするとして、10%まるまる還付なのか、枝野幸男幹事長の言ったように増税分の5%分の「全額還付」なのか、よく考えると分からない。もし、10%分まるまる還付なら減税になってしまう。「全額還付」という言葉を注釈抜きで使えば前者だろう。ことほど左様に菅首相の言っていることは思いつきレベルだ。それはともかく仮に10%全額還付となると、どのような現象が起きるだろうか。
例えば、年収100万円の人が、今まで手を出せなかった10万円の商品を買おうとすると買いやすくなる。コストは10万円+消費税1万円=11万円。この11万円を消費者金融で借りる。金利は上限金利18%(10万円以上100万円未満)とすると、1年後に返済するとして、総返済額は12万9800円。しかし、消費税分1万円が還付されると実質総返済額は11万9800円になる。とすると、実質金利は8.9%になってしまう。5%還付でも、かなりの金利低下だろう。また、現行の消費税で同じ買い物を消費者金融を使って行えばコストは10万5000円×1.18=12万3900円。想定の実質総返済額11万9800円はそれよりも4100円安い。
これだけ実質金利が下がれば消費者金融はウハウハだろう。過払い訴訟の経営難から奇跡的に復活するかもしれない。なにせ高金利分の半分以上を国が肩代わりしてくれて、かなりの低金利で貸せるのだから。
その結果、消費は増えるだろうが、実質金利が急落した分、借金漬けになる人も増えるのではないか。何かアメリカのサブプライムローン消費者金融版の悪寒がする。サブプライムローンの場合、資産価格が上がれば、余計に借金でき、逆に資産価格が下落して返済できなければ住宅を手放すだけでいいのだから。
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