ビッグマック指数を超えた円高

アゴラ:はっきりいうと今は円高ではない - 藤沢数希(金融日記)

為替レートを決めるもっとも基本的なファンダメンタルは何かといえば、それは購買力平価説である。お金がなぜ価値があるかというとそれはお金でモノやサービスを買えるからである。そしてモノやサービスに一物一価の法則が成り立つとすると、アメリカで1個1ドルでハンバーガーを売っていて、日本では1個100円でハンバーガーを売っていたとすると、このハンバーガーから見れば、1ドルと100円は同じ価値でなければいけない。すなわち1ドル=100円と為替レートが決定されるのである。
さてアメリカは2%程度のインフレで日本は1%程度のデフレだった。つまりハンバーガーの値段は10年たつとアメリカでは1ドル20セント程度に値上がりし、日本では90円程度に値下がりすることになる。この時の為替レートは1.2ドル=90円、つまり1ドル=75円になるのである。

実際にイギリスのThe Economist誌が発表しているビッグマック指数最新版Jul 22nd 2010 を見ると、
日本のビッグマックは320円で計算されており、1ドル=85円70銭となっている。当時の為替レートは1ドル=87円20銭だから2円ほどビッグマック指数の方が円高。今は1ドル=81円台なのでビッグマック指数の方が実勢レートより円安になっている。
4年以上前に書いた「ビッグマック指数で人民元世界一割安」では1ドル=80円だったので、4年かかって実勢レートがビッグマック指数に追いついてきたことになる。
さて、現在は日本マクドナルドは期間限定で1個200円のキャンペーン価格実施中だそうだが、レギュラー価格は全国で290円〜320円で販売されているそうだ。ビッグマック指数は上限価格の320円(恐らく東京価格)を採用したのだろう。
しかし、キャンペーン価格が終わって果たして320円に戻るかと言えば、恐らく急にレギュラー価格に戻せそうにない。いきなり300円以上に戻せばいかにもイメージ的に割高感が強くなる。他のファーストフードとの値下げ競争やその後の円高を考えるとレギュラー価格も300円以下に値下げされる公算が高い気がする。
仮に下限価格290円に落ち着くとすると、アメリカでの販売価格3.73ドル=290円となり、1ドル=77円75銭となる。かなり現実味のある数字ではある。
しかし、問題は今後もビッグマック指数円高になると言えば、疑わしい。既に穀物価格も上昇し、ということはパンや牛肉の原材料費がもろに響いてくるだろう。原油価格も上昇しているので、2年前の資源価格暴騰も再現しかねない。そうなると、原材料輸入が頼りの日本なので国際収支に影響し、円安要因になる。
また、現在の円高はかなりの部分、来月のアメリカのFOMCの追加金融緩和策を期待してのドル・キャリートレードによるものと思われるので、実際に追加緩和が公表された段階で逆にキャリートレードの巻き戻しが起きるだろうから円は1ドル85〜90円くらいまでは戻るだろう。
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