火事場泥棒的な“復興経済策”

竹中平蔵氏は今朝のテレビ番組でTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)を前提に東日本大震災の農業復興策を提案していた。と言っても、具体案を開陳したわけでもなく、要はこれまでの非効率の農業をやめて効率的で生産性の高い競争力のある農業をということだろう。まだTPPに参加するかどうかも議論中なのに気が早いというかドサクサ紛れというか、火事場泥棒的というか、いやはやである。
そう言えば、他にも「復興特区」というのもあった。これもまた震災以前からそこかしこで議論されたものを応用しただけのもので、やれ法人税の廃止、負の所得税(ベーシック・インカム)だ、公的年金の廃止、解雇規制・最低賃金の撤廃、教育バウチャーなどなど、どっかで聞いたというか聞きあきたような“案”をそのまんま「復興特区」という名の下に実施しようなんて話だ。この調子じゃどこそこをカジノになんてのも出て来るだろう。
新味なんて何もないのだが、逆に八戸から福島県に至るまでどこも似たり寄ったりの横並びというか縦並びの復興特区銀座ができる恐れさえありそう。横並びのハコモノの代わりに都市そのものが似たり寄ったりの「無駄な復興特区」ができてしまいそうだ。
そもそもこういう発想は関東大震災直後の後藤新平の帝都復興が下敷きになっているみたいなのだけれど、これは首都復興案で、大きな面積がそっくり解体されてしまった土地とは訳が違う。今度は小都市が東北の太平洋岸沿いに並んでいるのだ。下手すれば日本海岸沿いに沢山作られたコンテナヤードと同じ具合になってしまう。
確かに街ごとごっそり津波にもって行かれ、彼らにとっては「非効率な街」を解体する費用がなくなったから、がれきさえ取り除けば何でも作れる更地が手に入る。ある意味美味しい土地なのだ。今までその町名や市名さえ知らず知ろうともしなかった東京の経済人種(もはや経済学者とか経済評論家と呼ぶべきじゃない)が思惑も含めてうごめいている感がある。しかし、ロケーションから言って、震災直後はともかく震災が落ち着けば誰も見向きもしなくなるだろう。そもそも今まで東京から見捨てられたような街ばかりなのだから、熱が冷めれば元の見捨てられた街になる可能性が高い。気が付けば“無駄な復興”という悪夢だけが残ったということになりかねない。
Clickで救えるblogがある⇒にほんブログ村 経済ブログへ