「日本は未曾有の国難」なんてナンセンス

東日本大震災福島第一原発事故で日本は未曾有の国難らしいが、こういう情緒的な誇張表現はある程度致し方ないのかもしれない。けれど、客観的に見れば、ただの大きな災害だ。
貿易収支、4月上旬は赤字=震災響き輸出2割減(47NEWS)

財務省が27日発表した4月上旬の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1689億2900万円の赤字となった。東日本大震災によるサプライチェーン(部品供給網)の寸断や計画停電による生産停滞が響き、輸出額は前年同期比19.4%減の1兆4941億3700万円と、減少幅が震災直後の3月下旬(13.1%)から拡大。輸入額は0.2%増の1兆6630億6500万円だった。

ちなみに先月は、
3月の貿易黒字は1965億円、震災で自動車輸出などが減少

[東京 20日 ロイター]財務省20日に発表した3月貿易統計速報によると、貿易収支(原数値)は1965億円で2カ月連続の黒字となった。前年比は78.9%減。東日本大震災の影響で輸出が大幅減少したことが響いた。

と、まがりなりにも黒字を維持していた。今月は多分赤字だろうが、「国難」と呼ばれている割には大したことはない。赤字に転落したくらいで国難だったら、他の国々は慢性国難だ。
実際、被害を被ったのは、岩手県宮城県福島県、青森、茨城両県の一部で、実質的には4県分プラスα程度で、47都道府県のほぼ1割と見ていいだろう。こんな程度で国難と言われても。国難と言うなら、国債残高900兆円以上の財政赤字こそ国難。これも政治のへたれから由来するものなので日本経済そのものの本質的問題じゃない。
問題の電力だけれど、世銀によると、2007年の日本の一人当たりの電力消費量は8474kWhだ。同様に米国13638kWh、ドイツは7184kWh、フランス7772kWh、イギリス6123kWh、イタリア5713kWh。
日本が節電25%したとしても一人当たり6355kWhだ。それでもイタリアより上でイギリスよりもわずかに多い。
しかも25%節電と言っても、東日本の夏季あるいは厳冬期限定だ。サプライチェーンの問題など文字通り時間の問題で解決される。
これで未曾有の国難だの「“戦後”から“災後”の時代に入った」「3.11以降、世界が全く別の世界になった」などと言う言説はお笑い草になるだろう。現実には9.11の時も、リーマンショックの時も、似たような言説が飛び交ったが、その後の世界は何ほどでもなかったように存在している。
そもそも日本経済はエネルギー多消費型でない。エネルギー消費単位当たりGDP(世銀調べ)だと、2007年ベースで日本は8.34US$/KgOE(石油換算kg)で、アメリカの5.98よりはるかに高い。比較的エネルギー不足に対して抵抗力がある。
そもそも今回の節電で分かったことは、電力をこれまでいかにどーでもいいいことに使い過ぎていたかということ。コンビニの店内照明を半分にしても何の支障もないこと。店の看板照明を消しても誰にも迷惑かからないということ。
一昔前の列車は昼間は車内照明を消していてトンネルに入っている間だけ点灯させていた。一昔前の列車やバスは車窓を乗客が適度に開けて風を入れて暑さをしのげたし、ブラインドもあった。最近の新しい列車やバスは車窓は開けられず、ブラインドもなしというのが増えてきた。要はいつもエアコンがON前提での設計だ。
節電を緊急対応ではなく通常節電にすれば、日本のエネルギー消費単位当たりGDPはもっと高くなるだろう。
問題は第二次産業第三次産業ではなく、第一次産業だろう。塩害や放射性物質飛散で農業が被害を被った。しかし、そもそも日本には埼玉県と同じくらいの耕作放棄地がある。農業被害に遭った農業生産者には耕作放棄地へ移農してもらい、そのための面倒を政府や東電がケアすれば何とかなる。
本当の意味で壊滅的打撃を受けた産業セクターは漁業くらいだろう。漁業の場合は漁船や港湾施設、養殖筏が全てなくなってしまった三陸海岸地帯や、福島第一原発による海洋汚染で手ひどくやられた。牡蠣鍋とアンコウ鍋は大打撃だろう。復興なんたら会議でまず行うべきことはエコタウンだのかんだのという歯の浮いた文言ではなく、漁業の「復旧」だ。復興ではなく復旧だ。けれど、なんとか会議の人達は泥臭い復旧はお嫌いらしい。知ったかぶりしてGDPの成長に寄与しないとか、しゃらくさいこと言うのだろう。
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