埋蔵電力は勘違いの産物?

原発50基分の「埋蔵電力」6000万キロワット―どこにあるの?(J-castnews)

にわかに浮上した「埋蔵電力」。政府も調査に乗り出したこの電力は、一般企業などの自家発電のことだという。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長によれば、日本全体で6000万キロワット、原発50基分の自家発電能力があるが、「稼働率が46%くらいで、半分以上は使ってないものがある」という。

埋蔵電力と言う以上、手付かずで眠っている発電能力というイメージがあるが実態はほとんど現実に使われていると言っていいのではないか。飯田氏によると、東京でも46%はすでに使われていて、残りの56%は「未使用」だという。しかし、なぜ「未使用」なのかは明確に説明されてない。
自家発電余力わずか116万キロワット 首相が発掘指示、危うい脱原発露呈(産経)

調査によると、沖縄を除く全国3141カ所の自家発電の総出力は今年3月末現在で5373万キロワットに上る。このうちすでに電力会社に販売している卸電力事業者の設備が1928万キロワット分を占めるほか、電力会社と売電契約を結んでいる工場などの設備も約260万キロワット分ある。
残りは約3200万キロワットだが、自社工場などで大半を使用しているほか、すでに廃止になっていたり、電力網に接続されていなかったりする設備が多く、新たな供給余力はわずか116万キロワットしかなかった。

この残りは約3200万キロワットを5373万キロワットで割ると約60%になり、飯田氏の主張する「56%は未使用」とほぼ一致する。
それが正しい一致と仮定すると、産経新聞によればその未使用分も「自社工場などで大半を使用している」ことになる。「大半」というのがどの程度のものなのか、これも曖昧なのだけれど、どうも埋蔵電力の希望はどんどん怪しくなる。
そもそも「未使用」ということ自体、ありうるのか。
常識的に推測すれば6000万キロワットという数字は全国の自家発電所が全て24時間フル稼働した場合なのではないかと思える。しかし、工場の自家発電は工場の操業時間に合わせて発電するものだろう。そして、恐らく大部分の工場は昼間操業して夜間は操業を休止しているはずだ。
となると、自家発電所だけは工場の操業時間と無関係に稼働させねばならず、その大部分は夜間ということになる。しかし、電力需要が逼迫するのは真昼の時間帯だからいくら夜間に発電してもほとんど意味がない。せいぜい揚水発電に貢献するくらいだろう。
だとすると、「埋蔵電力」を利用するには自家発電設備のある工場を全て深夜操業にシフトして初めて成り立つ概念になる。恐らくメンテナンスで休んでいるものを除けば真昼の時間帯は既にほとんどフル稼働状態だろう。元々電力会社の電力料金より安く発電してコストを安くするためのものだから遊ばせているわけないだろう。
残された利用法は工場の深夜操業シフトで真昼に自社工場で使用していた自家発電の電力を公共の電力のために売電してもらうしかないことになる。
しかし、そうするためには、メンテナンスが今以上に大変になる上に、経営側と従業員側とで協議しなければならない。これまで昼間勤務だったのが、いきなり夜間勤務となると、単身者以外なかなかスムーズにシフトするのは難しい。最終的に従業員の家庭内での話し合いも必要になる。従業員も家族としての役割があり、いきなり夜間勤務、昼間はお父ちゃんだけ就眠、そばで子供の幼児が遊んでいて寝不足ということも考えられる。
つまり「埋蔵電力」にまだのりしろがあるとしても、それを実行するためには色々な意味で準備期間が必要で、最低でも4月、5月ごろから準備していないとどうにもならないのじゃないか。それをまるで蛇口を捻れば今すぐじゃーーと出る水道水みたいにお気軽に語られても困るのだ。
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