経産省の自然エネルギー増やさせない作戦の欺瞞

再生可能エネルギーの大量導入に伴う系統安定化対策コストについて(平成22年3月3日)

1.余剰電力の発生
【課題】太陽光発電が増加すると、休日など需要の少ない時期に、ベース供給力(原子力+水力+火力最低出力)と太陽光の合計発電量が需要を上回り、余剰電力が発生。
【対策】
蓄電池の設置、GWや年末年始など低負荷期における出力抑制、等

これは全くナンセンス。電力のわずか1%未満しか現状ではない段階から太陽光発電を需要が少ない時は抑制しろ、というのだ。種蒔いてから育つな、と言っているようなもので本末転倒も甚だしい。ここで官僚特有のごまかし用語があって「火力最低出力」という言葉を使っている。ここで言うベース電力というのは完全なナンセンス。電力の需給調整には火力が最適なのだけれど、それができないと思わせるためにこんな訳の分からない言葉を使っている。
じゃあ、休日は火力発電所全部「最低電力」に落としているのか。今は原発がすっかりへたっちゃっていて、既にその前提すらも崩れているのだが、別に昨年3月11日以前にも、そんなしおらしい火力の使われ方されていなかった。
したがって対策に書いてある「蓄電池の設置」も太陽光発電のコストを上げさせてあきらめさせるための作戦なのだ。火力発電が実質蓄電池の役割を果たすから蓄電池の設置など元より必要ないのだ。必要ないのに必要と思わせれば太陽光発電のコストをますます大きく見積もれる。

2.出力の急激な変動
【課題】太陽光発電の出力は、天候などの影響で大きく変動。短期的な需給バランスが崩れると周波数が適正値を超えて、電気の安定供給(質の確保)に問題が生ずるおそれ。
【対策】出力調整機能の増強、等

「短期的な需給バランスが崩れる」ことなど太陽光発電があろうがなかろうが常に起きている。例えば、夏季もしくは冬季に首都圏を前線が通過し、気温が一気に上昇、もしくは下降すれば、エアコンの電力需要はそれに合わせて一気に下降したり上昇したりしている。この変動は電力の比率1%未満の太陽光発電の供給電力不安定とは桁が違う。桁が違っても、前線の通過で電気の安定供給に問題が生じたなどという話聞いたことがない。エアコンを消したりすることは相対的に電力を発電して供給することと同じだ。需要電力と供給電力は常に相対的な関係にある。なのに、供給電力の不安定ばかり煽り、需要電力の不安定は制御できているという矛盾には知らんぷりを決め込んでいる。ひょっとしたら、経産省の役人も無知で書いているのかもしれないが。

3.電圧上昇
【課題】太陽光パネルの設置数が増加した場合、配電網の電圧を適正値(101±6V)にするため太陽光発電の出力を抑制せざるを得なくなるおそれ。
【対策】配電網の強化(柱上変圧器の増設)、等

これも同じ理由で却下。面白いのは霞が関文学なのか、やたらと「おそれ」という言葉を使っていること。翻訳すれば、「おそれ」付きの文は「エアおそれ」だということだろう。
とどめの「エアおそれ」はやはりカネだろう。

シナリオ?’(出力抑制なし)(需要家側蓄電池)
2,800万kW導入時→57.2兆円

「57兆円」となればさすがにびびるだろう、という算段だ。こんなに脅されれば、太陽光パネル設置に逡巡するだろうと考えているらしい。
実際にはここに書いてある「おそれ」は経産省が必死で考えた「エアおそれ」に過ぎない。福島第一原発以降もまだこんなナンセンス垂れ流しているのだろうか。同じことを風力発電でもやっていたから、そうなんだろう。これで、「太陽光発電は皆さんが思っている以上にコストがかかります」ととどめを刺したいのだろうけれど、本当に壮大なウソを税金を使って書けるもんだと感心してしまう。
Clickで救えるblogがある⇒にほんブログ村 経済ブログへにほんブログ村 環境ブログ 環境学へ