自然エネルギーを増やさせない元経産省官僚の欺瞞

【GEPR】拙速な発送電分離は危険—21世紀政策研・澤昭裕研究主幹

「電力会社が送電網を開放していないことが問題だ」という認識が一部にあるが、まずもってこれが事実誤認である。既に日本では、託送料金を規制対象とし、料金算定基準をあらかじめ公開すること、託送に係る会計を分離し、会計監査を受けたうえで収支実績を公表することで確保している。このような会計・機能分離により送電網は新規参入者に公平に開放されており、その公平性は第三者機関による監視などで確保されている。

東京電力の託送料金の算定によれば、託送料金の総原価の中には、水力、火力、原子力の発電費用が全て含まれている。本来、送電網というのは道路網に例えられるべきで、道路には大型トラック(原発)も、バス(火力発電)も、車(水力発電)も、バイク(業務用自家発電)・自転車(自然エネルギー)も走っている。なのに道路費用の中に各タイプの車の費用が上乗せされているようなものだ。
託送料金自体が発送電分離されていない
これじゃ高いわけだ。ちなみに、東電が示している総原価5兆4162億円のうち本来的に託送料金と呼べるのは送電費、変電費、配電費の1兆614億円だけだ。託送料金は5倍高く取られている。

また、託送料金が割高だという指摘もあるが、日本は地形的理由からもともと送電線の敷設コストが高いため、託送料金が高いのは当然で、発送電分離や自由化の文脈では筋違いの指摘である。

言うに事欠いて「地形的理由」というのは噴飯ものだ。申し訳ないが、地形的理由だけでは5倍もの「割高」を誤魔化しきれるものじゃない。高低差はあっても日本は国土が狭く供給元と需要元との距離が相対的に短いために高低差だけで割高とするには無理がある。第一、地形的理由が割高というのなら、送電コストが少なくて済む太陽電池パネルなどの地産地消発電は有利である。
この澤昭裕という人物、昨年のNHK番組でも川崎市にできたメガソーラー発電は「ゲリラ豪雨が襲ったら、発電量が急減し、その分、火力発電で補わなければならない」と発言していた。まあ、これは「経産省の自然エネルギー増やさせない作戦の欺瞞」で書いた通りの「エアおそれ」、またの名はこけおどしだ。
とどめはこの人、地球温暖化問題の基本的な知識が欠如しているらしいこと。

端的に言って、日本の発送電分離や自由化は、世界で言えば周回遅れの議論だ。化石燃料の価格が低迷し、余剰設備が見られ、さらに温暖化対策という問題がまだ存在していなかった中で、欧米が自由化を進めた90年代。このときとは状況が異なり、すでに今の政策目的と一致していない。これに加え、安定供給の重要性がますます強くなり、また長期的視点の必要性や経済性だけで割り切れないエネルギー分野独特の事情などもある。

温暖化対策が90年代まだ存在していなかった!?
この人は、地球サミットが開かれたのが1992年で、それ以前から温暖化対策がヨーロッパを中心に大騒ぎになったことすら知らないらしい。経歴を調べてみると、2001年に経済産業省産業技術環境局環境政策課長になっている。きっと10年前のこともお勉強せずに目の前の業務に専念しておられたのだろう。きっと、この人の頭の中では、再び地球温暖化問題が再燃した2007年が温暖化政策元年ということになっているのだろう。所長をしておられる国際環境経済研究所も、いかに自然エネルギー促進を食い止めるかを研究する研究所らしい。
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