読売新聞のパニック報道症候群

iPS心筋移植、ハーバード大で…初の臨床応用(魚拓)

あらゆる種類の細胞に変化できるiPS細胞(新型万能細胞)から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞移植する治療を米ハーバード大学の日本人研究者らが6人の患者に実施したことが、10日わかった。

 iPS細胞を利用した世界初の臨床応用例で、最初の患者は退院し、約8か月たった現在も元気だという。ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった京都大の山中伸弥教授がマウスでiPS細胞を作製してから6年、夢の治療として世界がしのぎを削る臨床応用への動きが予想以上に早く進んでいる実態が浮き彫りになった。

 iPS細胞を利用した心筋の細胞移植を行ったのは、ハーバード大の森口尚史(ひさし)客員講師ら。森口講師は、肝臓がん治療や再生医療の研究をしており、東京大学客員研究員も務める。現地時間10、11日に米国で開かれる国際会議で発表するほか、科学誌ネイチャー・プロトコルズ電子版で近く手法を論文発表する。

(2012年10月11日07時31分 読売新聞)

一面ばかりか中面まで使っているから社内ではお祭りの躁状態だったことが想像される。
これで読売は昨年の東京電力新社長誤報に続き、2年連続トンデモ大誤報大賞に輝いた。いずれも世間を賑わせているトピックスのさなかの誤報でパニック報道症候群と名付けたい。
世間の話題の最中のスクープ記事ほど怖いものはない。世間が躁状態ばかりか、報道する側も躁状態。こんな異常心理状態なら何が飛び出しても不思議じゃない。
そもそもまともな裏付け取材をしていないと批判されているけれど、そんなことしている暇もないのだ。脳裏には「世界的大スクープだあ!」で一杯、一刻を争う事態なのだから呑気にまともな裏付け取材して他社に先行されれば全て水泡に帰す。ついこの間、山中伸弥教授が「iPS細胞はまだ一人の患者も救っていない。これからです」と述べたことなどすっかり忘れて猪突猛進、もはやパニック状態なのだ。まあ、簡単に言えば記者も、新聞社全体の知的レベルも低いからブレーキが効かないのだけれど。
そもそも新聞社が読者に正確な事実を伝えるなどというのは建前に過ぎず、他社との無意味なゲームしか関心がない。無意味と分かっていても無意味なことに奔走する。福島第一原発事故で渦中の東電社長の誤報だって、正確性などどうでもいいのだ。スクープすれば、社長人事をスクープしたのだからそれだけ東電に食い込んでいるという社内評価が高まって出世の足がかりになる。そもそも世間では誰が東電の社長になるかなどたった一日早く報じられてもどうでもいいことなのだけれど。
官僚が意味がないと分かっていて、省内的には意味のある天下り先確保に汲々としているのとある意味よく似ている。そうなると「正確な事実を伝える」のではなく、「事実を作る」ことが新聞社の本性だということが分かる。これは戦時中も、今も変わらない。「国民不在の政治」だが報道も「国民不在の報道」だということ。
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