経産省2030年の再エネ比率5年前と不変、地熱コスト2倍に引き上げ

原発比率、30年に20〜22% 電源構成案を公表 経産省、再生エネは倍増(日経)

経済産業省は28日、2030年時点の望ましい電源構成(ベストミックス)案を公表した。原子力の比率は20〜22%と、東日本大震災前の28.6%より低くした。太陽光などの再生エネルギーは最大24%を掲げ、原子力を上回る普及をめざす。震災後に揺れ動いてきたエネルギー政策の見取り図を示し、コスト低減と環境への配慮の両立をはかる。

「再生エネは倍増」という見出しを読むとまるで、大転換のように思えるが、福島第一原発事故が起きた2011年3月のさらに1年近く前に策定された2030年のエネルギー需給の姿(2010年6月)の「電源構成」を見ると、再生可能エネルギーの比率は既に21%になっている。「最大」でやっと3%増にしかなっていない。つまり、原発事故以前の原発中心(50%)だった5年前とほとんど変わっていないのだ。原発事故を教訓に再エネ倍増するのかとつい錯覚しがちだが、何のことはない、何も変わっていない、何も影響されてない。敢えて言えば、再エネも民主党政権時代より少しましに自民党政権でも考えるようになったぐらいか。「最大24%」と、あくまで「最大」。このワーディングは原発のコスト「以上」と同じ。言い換えれば「再エネ24%以下」とはっきり抑制することを明言したに等しい。

再生エネは天候により発電量が変わる太陽光と風力を合計で9%弱にとどめる一方、安定して発電できる地熱や水力、バイオマスで最大15%程度を確保する。13年度時点で約11%の再生エネを30年までに主要な電源に育て、温暖化ガスの大幅削減につなげる。政府試算では発電コストが安いとされる原発の比率を20%以上にすることで再生エネの普及コストを吸収し、電気料金の上昇を抑えたい考えだ。

これまた変な話だ。地熱発電は5年前の目標も1%だった。今の目標も1%にとどまっている。つまり、相変わらずやる気なしだ。地熱は
【電気新聞】再エネ設備導入費、最安は地熱?会計検査院、6種を比較

1キロワット当たりの導入費用が最も安いのは地熱発電の2万円で、水力、太陽光、風力の順に続く。

と発表。
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書:「再生可能エネルギーに関する事業の実施状況等について(23頁)」平成26年10月

(イ) 再エネ発電設備の種類別の導入費用
7府省等が自ら若しくは委託者として、又は地方公共団体等が7府省等の国庫補助金等を活用して21年度から25年度までの間に導入した再エネ発電設備の1kW当たりの導入費用を種類別についてみると、図表1-2のとおり、海洋温度差発電設備が797万円/kW、バイオマス発電設備が37万円/kW、風力発電設備が35万円/kW、太陽光発電設備が33万円/kW、水力発電設備が10万円/kW、地熱発電設備が2万円/kWとなっている。

いよいよ「最安」の地熱が浮上と思いきや、経産省会計検査院の発表を覆い隠すかのように今回、長期エネルギー需給見通し小委員会に対する 発電コスト等の検証に関する報告(案)平成27年 4月で、地熱のコスト試算を4年前に比べて一気に1.85倍引き上げた。そのコストの中の4割以上が「政策経費」というもので、他の再エネに比べて断トツに増やされている。
政策経費を除くと10.9円/kWhで、原発のコストとさして変わらない。原発の場合コストに「以上」がつくので、実質コストは無限大を想定しているので、地熱は当然原発より安い。
地熱だけではない。風力も5年前と同じ1.7%。バイオマスが増えるのは火力と併用で「実績」を調整しやすいからだろう。そもそもここにも「最大15%程度」という「最大」という抑制の語法が使われている。
律儀なくらいに動かざること山の如し。これほどものの見事に世の中の期待を裏切ってくれる案も珍しい。ある経産省OBに言わせれば、「前提を変えればいくらでも変わる」ということらしい。安いか高いかは発電源の性質で決まるのではなく経産省の掌でこねられて決まるらしい。まことに情けない現実だ。もはや資源エネルギー庁を解体し、経産省から環境省に移転するしかエネルギー改革は進まないだろう。
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