中国の2030年CO2排出「野心的」でも現状並みか

中国、CO2削減目標提出 30年にGDP当たり60〜65%(日経)

国内総生産(GDP)当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を05年比60〜65%減らすなどして、30年ごろに全体の排出を減少に転じさせるという内容が柱だ。

中国は1次エネルギー消費に占める非化石燃料の比率を約20%に引き上げる目標も提示した。

ということなのだけれど、GDPと言っても、名目なのか実質なのかよく分からない。仮に名目だと、物価が2倍上がっただけで、削減努力何もしなくても排出量をGDPあたりで50%減らしたことになる。まあ、いくらなんでもこんなズルはないと思えるし、常識的に考えれば実質ベースだとは思うが・・・。
では、実質ベースGDPは中国でどれくらい推移しているかと言えば、
実質GDPの推移を見ると、2005年は8,309.76(10億、以下同)人民元。今年の2015年はまだ予定ベースだが20,564.07人民元。この10年間で2.47倍になっている。大体で年9%成長だ。2020年の見通しは27,796.95人民元(IMF推計)で、2015年比1.35倍、2005年比3.345倍になっている。今後5年間の平均年成長率は約6%と見込まれている。
2020年以降から10年間の実質成長見通しを仮に年平均3%とすると、その間の成長は1.34倍になり、2030年の実質GDPは37,356.78人民元になる。2005年に比べ約4.5倍になっている。2015年に比べても約1.8倍だ。
ここから「60〜65%」(中間は62.5%)を削減するとなると、2005年の排出量はどうか。
中国のCO2排出量の推移によると、579002万トン(世界銀行)とすると、62.5%削減したと仮定して
579002万トン×4.5×(1−0.625)=993940万トン
直近の中国の排出量828689万トン(2010年)よりも約1.2倍ということになる。2015年に比べれば、多分現状維持くらいか。
実際には中国は排出量ピーク年を5年早い2025年にしたいとしている。2020年から2025年までの実質GDP成長率を4%とすると、2020年の1.17倍と思われるので、2025年の実質GDPは、
27,796.95人民元×1.17=32,522.43人民元
で、2005年比で約3.9倍だ。
また中国は2020年までにGDP当たり排出量を05年比40〜45%減らす自主目標を掲げていたことから推測すると、2025年には排出量を05年比50〜55%削減すると思われる。そうすると、
579002万トン×3.9×(1−0.525)=1072601万トン
がピークということになる。2010年比約1.3倍が一応のピークということになる。推定通りだと、減ることはないにしても現状よりやや増える程度。
これを「野心的」と評価すべきなのかどうか。2012年現在、中国の一人当たり排出量は6.7トン。2025年の人口を14億5000万人とすると、一人当たりでは7.4トンになる。日本の現在の一人当たりの排出量は9.6トン、アメリカは16.4トン。日本は2030年で2013年比26%削減、予測人口は1億1662万人で現在より約9%減少しているので7.8トンになる。アメリカは年2025年までに26-28%削減(2005年比)で人口は3億5000万人(2005年は約2億9500万人)、2005年の一人当たり排出量は19.72トン。27%削減として2025年の一人当たり排出量は12.1トンになる。年が異なるので比較はかなり難しいが、どうも相互牽制している様子もあるが、中国としては先進国と相互比較すれば文句の言われない範囲内ということだろうか。
そもそも基準年も目標年も各国バラバラ。本来なら統一して提出べきなのだが、そうしないこと自体が曖昧にしておきたいという思惑が参加国にあるということだろう。
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