海岸線世界6位の日本が風力発電不向きなワケない。

世界の風力発電、原発抜く 15年、新設過去最大(共同)

日本は発電能力、新設ともに20位前後にとどまり、出遅れが鮮明になった。

風力発電を考える場合、基本的に風況の良い海岸線の長さは重要な要素だ。
国の海岸線の長さ順リスト(Wikipedia)
海岸線の長さのみに絞ると、以下のようになる。(km)

1 カナダ 202,080
2 ノルウェー 83,281
3 インドネシア 54,716
4 ロシア 37,653
5 フィリピン 36,289
6 日本 29,751

日本は小さな国という固定観念があるが、海岸線の長さに限れば世界6番目。オーストラリア(7位、25,760km)やアメリカ合衆国(8位、19,924km)、中国(11位、14,500km)、インド(14位、7,600km)、ブラジル(16位、7,367km)すらも上回る海岸大国なのだ。世界一のカナダも、ほとんどは北極圏近くの島々で海岸線を稼いでいるので風力発電の設置場所から考えれば、実質的に日本以下だろう。もっとも、海岸線はフラクタル構造なので、精度次第で海岸線が大きく違って来るので割引する必要もあるが。
再エネ大国と言われ既に風力発電で全電力の10%以上を占めているドイツはなんと51位(2,389km)に過ぎない。同じく風力発電大国のスペインも26位(4,964km)に過ぎない。ドイツなどはもう海岸線には風力発電が飽和状態になりかかり、洋上発電にシフトしつつある。
一方、風力発電大国と言われるデンマークも小国なのに17位(7,314km)と海岸線は意外に長い。日本はデンマーク並みに風力発電を普及する地理的優位性を持っている。
ところが、Wind power by countryによると、デンマーク風力発電能力は2015年現在で5,063MWで世界11位、日本は3,038MWで20位。単純に海岸線との比率でデンマーク並みに普及すれば20,594.7MWになり、現在のスペイン並みになる。
デンマークに比べて風況が悪いだろうという向きもあるが、電力量ベースでも2.1倍程度。発電能力が1.7倍程度なので日本より2、3割風況的に多い程度だ。そもそも日本では折角発電しても系統電力に入れることが拒否されることが多いので実際に風況でも差異はほぼないと考えられる。全くもってもったいない話だ。
この10年で日本は2006年比で2.3倍に増えたように見えるが、先行したデンマークやドイツ、スペインを除くとその数字が寂しくなる。中国は55.8倍、ブラジル36.8倍は次元が違い過ぎるとしても、アメリカ6.4倍、インド4.0倍、イギリス6.9倍、カナダ7.7倍、フランス6.5倍、イタリー4.2倍、スウェーデン10.6倍、ポルトガル3.0倍。
ドイツの余剰風力発電電力が流れてきて「迷惑がられている」とされるポーランドも実は33.3倍とトンデモなく増えている。この勢いではあと10年もすれば、当のドイツと肩を並べることだろう。その暁にはドイツに輸出しているかもしれない。自分で迷惑のタネ作ってどうするんだろうか。
それに比して、日本はまだ若いのに既に老成した若年寄のような状態になっている。「日本は偏西風が吹かないから無理」(吹いているよ!)とか「蓄電池が実用化されるまで無理」(なぜかその文脈に限って揚水発電はあたかも存在しないかの如く無視される)とか無理矢理ガラパゴスな「できない理由」並べ立てるだけの不毛なためにする議論をどこまで続けるつもりなのだろうか。
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