ブラックカーボンがCO2削減の抜け道に利用される

切込隊長@山本一郎「ニュースまとめ斬り!」:地球温暖化対策による脱炭素社会はどうなってしまうのか

では突破口は、というと、どうやら黒色炭素の削減による温室効果対策ではないか、というところまでは何となく分かっていて、日本ではいまいち良い報道がないのでfinalvent氏のブログを参照元としたいわけですが。

黒色炭素(Black Carbon:ブラックカーボン)の地球温暖化効果

確かに、温室効果「ガス」といわれて複雑なメカニズムで温度上昇を言われるよりは、「黒い服は太陽光から熱せられやすいんだよ!」みたいな小学校の理科みたいな単純明快なアプローチのほうが私なんかは真実に近そうだ、と思ってしまいます。

そう。その

小学校の理科みたいな単純明快なアプローチのほうが私なんかは真実に近そうだ、と思ってしまいます。

が他ならぬブラックカーボン悪玉論のウケの良さなのだ。
山本さんの引用されているのは「極東ブログ」だが、

温室効果ガスの代表は二酸化炭素(CO2)だが、米航空宇宙局(NASA)によると、全体の影響で占める割合は43%。半分以下である。その他の温室効果ガスで影響力の高い順に見ていくと、メタンガスが27%、黒色炭素(Black Carbon:ブラックカーボン)が12%、ハロカーボン(Halocarbons:ハロゲンを含む炭素化合物)が8%、一酸化炭素と揮発性有機物は7%となる。
ラマナタン氏によると、地球温暖化防止の面において、黒色炭素1トンの削減は200〜3000トンのCO2削減の同等の効果を持つらしい。また、現状、黒色炭素の排出の25〜35%は中国とインドよってなされている。当然、これらの地域からの黒色炭素削減が進めば、地球温暖化遅延に大きく貢献するだろう。
二酸化炭素の削減は途上国のエネルギー政策とも関係し複雑な問題を起こすが、黒色炭素の低減は直接的にはエネルギー問題とは抵触しないこともメリットの一つだ。各国間の協調も容易である。地域住民への健康上のメリットは、東京都のディーゼル車破棄ガス規制でもわかる。
 黒色炭素低減は今後日本でも注目されるだろう。日本が今後CO2を25%削減するという鳩山イニシアティブは、国民生活への経済負担が大きい割に、実際に達成できるのかすら疑問視されているが、現実の地球温暖化を遅延させるということを第一の目標とするなら、黒色炭素低減が打開策になる。一案に過ぎないが、日本が率先して黒色炭素による温室効果二酸化炭素のそれと交換レートを策定し、中国やインドなど途上国の黒色炭素排出低減技術・装置の提供で相殺してはどうだろうか。それが可能なら、鳩山イニシアティブはおそらく比較的容易に達成できるだろう。

つまり、ブラックカーボンを削減すれば二酸化炭素を削減したと見なす、ということだ。言わば「二酸化炭素排出の途上国へのアウトソーシング」ならぬ今度は二酸化炭素排出のブラックカーボンへのアウトソーシングになってしまう。
これは金融政策に例えれば、日銀ではなかなか量的緩和ができないから政府紙幣を発行してしまえという反則技だ。
その結果、ますます二酸化炭素の地表での過剰流動性が高まり、排出権市場は下落し、二酸化炭素そのものの削減の動機付けが衰退する。そもそも排出権市場自体がダダ漏れのシステムであることはさて置くとして。
ネタ元の
The Evolution Of An Eco-Prophet NEWSWEEK 
でも、

On the other hand, the prospect of what Schmidt calls "this low-hanging fruit, which may be bigger than we think," could—like biochar—diminish enthusiasm for cutting CO2.
一方でこの収穫しやすい果実が思いのほか大きいかもしれないと予測されると、CO2削減の熱意を冷めさせる心配がある。

と、一応クギを刺している。
今頃なんでブラックカーボンがやたら強調されているかと言えば、抜け道探しなのだろう。
ブラックカーボンなどそもそも温室効果ガスではない。基本的にエアロゾルの一種で地球冷却効果と地球温暖化効果両方の側面がある。その効果は雲と同様はっきりしていない。こんなことまで見なし規定でCO2削減しました顔されれば、どんどん何でもありになってしまう。極端な話、砂漠化も地球温暖化防止に役立っていることになる。なぜなら砂漠のアルベドは森林より高く雪面に次ぐぐらい高いから砂漠化は地球温暖化防止に役立っていることになる。砂漠が増えた分、二酸化炭素を削減したことと見なしますとでも言うのだろうか。
こういう見なし規定というのは珍しいことではなく「熱帯林がCO2排出削減の粉飾決算に利用される危機」だってそうだ。
ブラックカーボンなど実は産業化する前から存在する。
Major emitters of black carbon

42% Open biomass burning (forest and savanna burning)
18% Residential biofuel burned with traditional technologies
14% Diesel engines for transportation
10% Diesel engines for industrial use
10% Industrial processes and power generation, usually from smaller boilers
6% Residential coal burned with traditional technologies

大部分を占めるOpen biomass burningというのは、要は山林火災がほとんどだ。2位も薪や乾燥糞などを燃やして調理や暖をとりましたという話。これだけで60%を占めている。残りの産業からのブラックカーボンは先進国ではほとんど卒業済みで大した技術ではなく、中国で独自に行えるもので、わざわざ先端環境技術の提供などという大仰な話ではない。そこまで中国を甘やかしてどうする、自分でやれよ、という話だろう。こんなものまで二酸化炭素排出削減に見なされれば、むしろ途上国にブラックカーボン利権が生まれ、ますますブラックカーボンを垂れ流す逆効果さえ予測できる。馬鹿馬鹿しい話なのだ。
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