マイケル・サンデル教授の八百長思考実験

今週の月曜の日テレで見たのだけれど、一体どういう「白熱教室」なのかと思ったら、面白くなさ過ぎる。なんでこんなのが白熱するのかさっぱり分からない。
マイケル・サンデルハーバード大教授が問いかけた一つの課題は、

あなたが列車の運転士でブレーキが故障し、暴走している。目の前には5人の作業員が線路上で仕事していて列車の接近に気付いていない。しかし、作業員の手前に分岐ポイントがあり、「ハンドルを右に切れば」右の線路に迂回できる。しかし、右の線路にも作業員が1人だけ仕事している。さあ、どうします。

これは、トロッコ問題の応用編らしいのだけれど、テレビで見た私自身の回答は「必死で警笛を鳴らす」だった。それ以外に選択の余地なしだ。もちろん、オリジナルのトロッコには警笛なんてないだろうから、

(サンデル教授「警笛はないものと考えてください」)

と慌てて追加条件を付け加えるのは目に見えている。
それでもそのまんま直進するのが一番合理的だ。まず、当たり前の話だが、そもそもトラックじゃないんだからハンドル切れないよ。

(サンデル「切れるものと考えてください」)

ってか。でも運転士にはポイント切り換えるのは無理。

(サンデル「運転席からポイントを切り替えられるものとします」)

それでも、やっぱり直進しかないね。列車は暴走しているんだから、急に右に曲がったら脱線転覆するよ。作業員は助かるかもしれないけれど、俺の命がやばくなるし、後ろの何百人という乗客の多数がなくなるだろうから、5人の作業員なんて物の数じゃないだろ。運転士である以上、お客様である乗客の生命を第一に優先するのは当然だし。

(サンデル「列車は・・・脱線転覆しないものと考えてください(汗)」)

それでも、直進する。なぜなら、目の前の5人はある程度列車がいつか接近するものと想定して作業している。だから(警笛は鳴らせなくても)列車音は確実に大きくなっているので今にも気付く可能性は右に曲が線路で作業している1人より高い筈。なぜなら、右に曲がる線路の作業員は引き込み線なので、列車がこちらに向かって来ると想定していないので、列車音が聞こえても自分がはねられると思わないだろうから。前の5人以上に気付いても逃げられない可能性が高い。

(サンデル「ええ・・・両方とも平等に気付かないと・・・想定してください・・・・(滝汗)」)

なんか、ああ言えばこう言う、じゃねえか。

(サンデル「これは、状況で人々の行動がどう変わるかという倫理学の思考実験ですから細かい現実は無視されます(キリッ)」

それでも、やっぱり直進するよ。面倒くさいから。思考実験で現実を無視していいなら、5人死ぬか1人死ぬかという現実的問題も無視していけない理由はない。現実に人が死ぬわけじゃないのだから。
つまり、人々の思考で左右する思考実験をすれば再帰的に思考実験自体が破綻してしまう。

この思考実験のペアになるのはおデブがいて橋の上からおデブを突き落としたら確実に列車(トロッコ)が止まり5人の作業員は確実に助かるという設問。調査では、前者は右に曲がって1人犠牲にしても許されると回答する人が圧倒的に多く、後者ではおデブを突き落とすのはたとえ5人を助けるために許されないという人が多かったという。
しかし、後者の例も、極端な現実無視の思考実験であり、破綻している。人の判断は時間を要するので、短期的な判断でおデブを突き落とすのは最初から無理。
これで、合理的思考より親近性のような情緒的な判断が優先されるって言われても、そりゃそうでしょう、そんなのわざわざ思考実験しなくても各自思考実験してるだろう。
これでもって、サンデル教授のコミュニタリアンの思想に誘導されても。サンデル教授自身、自分自身の回答は示さず、中立を装っているが、思考実験で現実の雑駁な要素を排除している時点で実は誘導尋問しているに等しい。彼はそうした現実を排除した純粋化された誘導尋問で最初から人々がどう反応するか分かっているから自分で回答を出す必要もないのだ。言い換えれば、回答者の自由な思考を遮断化することで、回答者に自由に思考していると錯覚させながら“模範回答”を引き出そうとしている。
ところで、この番組には忙しい筈の片山さつき石破茂原口一博錚々たる国会議員が呑気そうに熱心に聴講していたのだけれど、やはり国会議員は税金泥棒だ。
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