山形浩生氏の国際的悪あがき

山形浩生 の「経済のトリセツ」:クイズ:経済学者3人にきいてみました。で、山形さんが大いにはしゃいでおられる。でも、ここまで必死に努力して悪あがきする人も珍しい。
まず山形氏の質問の英語原文を読むと、determineまたはdeterminantという語が7度も使われている。
対して、ビル・ウィートンの返事には一切出て来ない。ロバート・J・ゴードンの返事には一度だけ使われている。
Everyone's wage is determined by the economy's average productivity, not by the productivity of any single job.
だけど、これ、質問の趣旨とずれている。これは明らかに山形氏の質問
Some argued that this was determined by the absolute productivity level of each person and profession.(中にはそれが個々人の生産性で決まると論じる人もいます。)
に対応した回答だ。そりゃ(各国間の賃金水準は)個々人の(絶対)生産性で決まるわけないから、こう答えざるを得ないだろう。当たり前のことだ。
しかし、こんなこと初めから問題になっていない。そして、誰も実際には決定要因などと言っていない。経済学レベルじゃなく、素人向けに「相関するよ」と言っているだけだ。
そして、問題になっていたのは、
賃金水準は、絶対的な生産性で決まるんじゃない。その社会の平均的な生産性で決まるんだ。
である。
ところが、山形氏の質問は微妙にずらされていて、
Is it completely off the mark to say that the overall wage level is determined by the average productivity of that economy? In Japan, we were having this discussion on the net about the determinants of the wage level among countries.(全体としての賃金水準が、その経済の平均的な生産性で決まるというのは、まるっきりピント外れな意見でしょうか。実は日本でいま、国の賃金水準の決定要因について議論しております。)
になっている。
これじゃ、みんなBoth are correctだの、completely correctだの、on the right trackだのと言うだろう。みんな、原文のthe wage level among countriesから「各国間の賃金水準の決定要因」the overall wage level から「全体的な賃金水準」から各国間の賃金格差を問題にしているのだな、と理解して、「そりゃそうだよ」と言っているに過ぎないのだ。
だから、「ピント外れな意見でしょうか」と問われて、「外れてないよ」と答えているだけだ。
つまり、これらの回答はネットでの「平均生産性」論争とは無関係なのだ。こんな「お墨付き」で「ロバート・J・ゴードン教授のことだから、実証データによる裏付け調査もなしにそんなことを言うとは思えないので」(分裂勘違い君)なんて全く的外れの権威信仰だ。
なぜなら、
賃金水準は、絶対的な生産性で決まるんじゃない。その社会の平均的な生産性で決まるんだ。
の「賃金水準」とは「各国間」ではなく「各国」(the wage level within a country)の、あるいは各産業の、つまりウェイトレスとか製造工場労働者の賃金水準を想定している。(なぜか山形氏は和訳では、そう書いていない)
そもそも、the wage level among countriesという英語表現が意味不明だ。普通に訳せば「諸国の中の賃金水準」になるが、国語の不得手な私には何のことか分からん。質問を受け取った3人は全体の文意から differences in the wage level between countriesと言いたかったのだろう、と受け取ったはずだ。
最初から質問が、オリジナルな問題を踏襲せず改竄されているのだ。
またaverage productivityつうのも、経済用語として定義が確立されたものではなく、文脈次第で微妙に意味合いが変わる。彼ら3人は国民経済生産性=国民総生産(GDP=付加価値)÷就業者総数(労働生産性の一つで、付加価値労働生産性を国家レベルで示した指標)、つまりGDP per employeeと理解しているはずだ。これは事実上所得水準と同じなので、同じだと答えるに決まっている。
ここまで書いたら、池田信夫氏も大体似たようなことを指摘されていた
いい加減に改竄した質問した人も、いい加減な質問にいい加減に答えざるを得なかった人も、皆さんご苦労さん。
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