長江哀歌(エレジー)

still life原題:三峡好人、英語タイトル:Still Life。(公式HP)ちなみにこの写真の2人は映画の中では物理的に接近することはあっても、直接関係ない。2人とも山西省出身(ジャ・ジャンクー監督もここの出身)で、相方を探しに三峡ダムに来たのだけれど。
この中年男はやたら事故で人が死ぬ炭鉱で働いていた炭鉱夫で、売買婚で結婚した妻を捜している。日本でも問題になっている偽装結婚のオリジナルってここら辺にあるのだろうか。
三峡ダムクルーズを重慶から武漢まで体験したことがあるが、ここらへんは景色もいいが、沿岸の町々は味も素っ気もないコンクリートの建物ばかりだ。それがまた外国人にはシュールに見える。
実際、この映画もシュールだ。
中途で建設を中止して放置されたのか、モニュメントなのかよく分からないコンクリート製のジャングルジムのオバケのような建造物は実際に見たような気がする。それが突然、ロケットのように発射して飛んでいく。かと思えば、突然、何の脈絡もなしにUFOが空を横切る。背景の山の手前を飛んでいるのだからかなりの低空飛行。飛行機には見えないし、隕石とも思えない。
建物の爆破解体シーンがあるのだが、崩れ落ちる建物はスクリーン中央なのに、それに気付いて窓外を見る2人の視線はスクリーン左側に向かい、いつまで経っても解体現場を見ようとしない。そりゃあ、山峡だから音がエコーして左から聞こえることもあるかもしれないが、そんなワケないだろう。この映画最大の謎だ。
しかし、この悠久の大河にとって、中国が打ち上げるロケットはUFOみたいなものだし、下流の上海あたりでニョキニョキ出来ている高層ビルは、あのワケワカメな建造物のようなものだろう。
謎と言えば、もう一人の看護婦の女性はやたらペットボトルの水を飲み、あちこちで補給する。
実はこの映画では庶民の日常生活のシンボルのような、タバコ、酒、飴、茶などがサブテーマになっているが、現代中国の日常生活のシンボルとしてのペットボトルじゃなかったのかと。そしてもう一つのシンボルは携帯電話。着メロが重要な役割を果たしている。
最も重要な現代中国のシンボルは通貨。
いきなり、人民元のみならずUSドルやユーロ紙幣がマジックで出され(日本の1万円札はなぜ出て来ないんだヽ(`Д´)ノ)る。↑のポスター写真の背景も人民元紙幣のデザインから取られていて、映像と重ね合わせられている。「知的財産権」なんて言葉もさりげなくインチキ見世物屋によって語られる。
監督の意図は明らかだろう。
英語のタイトルStill Life(静物画)の通り、動画でありながら膨大な力強い静物画の連続のような映画だ。
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