ダウト〜あるカトリック学校で〜

doubt公式サイト。原題:DOUBT。 ジョン・パトリック・シャンレィ監督、メリル・ストリープフィリップ・シーモア・ホフマンエイミー・アダムスヴィオラ・デイヴィス。力関係が神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)>>>校長(メリル・ストリープ)と説明されていたはずなのに、映画では圧倒的に校長が優位に見える。
たかだかあの程度の“疑惑”をつかんだだけで立場が逆転できるとは思えないのだが、案の定、実際には立場は逆転していなかった。そういう点で映像は校長目線で描かれているため、観ている方はつい騙されそうになる。
舞台は1964年のジョン・F・ケネディ暗殺事件直後のニューヨーク・ブロンクスの教会。付属の学校では、エイブラハム・リンカーンとかフランクリン・ルーズベルトのニュー・ディールとかやたら時事トピックス便乗ぽい話が出て来る。また強風で教会内の大木が倒れるというエピソードも何やら思わせぶりだ。この映画の解説サイトにはイラク戦争開戦のきっかけとなった大量破壊兵器の嘘情報とかぶらせているという話まである。けれど、もしそうだとしたら随分ヘタレな寓話だろう。
ここに描かれているのは、そんなご大層なものではなく、寛大な優しい心を持った神父に対する軽侮が乗じた校長のつまらない猜疑心、それにかこつけた狭い世界での小賢しい権力欲にしか見えない。
校長が神父との「不適切な関係」を疑っている黒人少年の母親から「世間知らずの癖に」と言い返されてたじろぐ姿は校長の劣等感が現れている。教会内では世の中を知っている賢者のつもりで振舞ってそれなりに権威を保てても、外の世界ではただの「世間知らずのバカ」と思われる屈辱感。校長のdoubtが実はその世間知らずの了見の狭さから来ていたのだということを思い知らされるのは、疑われた神父が追放されるどころか栄転したことを知った時だろう。結局、ラストは一人相撲していた自分の愚かさを悟った姿のように見える。
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