熱帯林がCO2排出削減の粉飾決算に利用される危機

NHK若田光一 地球環境を見る 森と海に迫る危機
24日に見たこの番組、炭素換算で海が年22億トン、森林が9億トンCO2を吸収していると紹介されたうえ、インドネシアカリマンタンでは熱帯泥炭林がスハルト政権時代の水田開発プロジェクトのために開発され、大量の二酸化炭素を排出していると報告された。
沼地の多かった泥炭林が、水はけをよくするため、水路が作られ、地面が乾燥化したうえ、森林が伐採されたため、ますます乾燥化し、1万年で約10メートル堆積した泥炭も乾燥化、火災が発生して、森林が焼けた後も泥炭が燃え続け、その煙が近隣の森林の光合成を阻害し、その森林もトータルで二酸化炭素を排出する結果になった。。燃焼のほかバクテリアによる有機物の分解という「冷たい燃焼」も止まらない、というのが概要。トータルで日本の年間CO2排出量程度のCO2を排出しているという
さて、ここまでは言いとして、もし日本のような先進国がこの破壊された泥炭林を復活プロジェクトに乗り出したらどうなるのかという問題。所謂CDM(クリーン開発メカニズム)の対象とみなされて、泥炭林からの排出量を少なくしただけで、日本の排出量を減らした見なされれば、日本は当分の間、現実に国内で化石燃料を消費し続けてもみなし排出量ゼロと認定されかねない。
しかし、もし、そうなったら、これは堂々と二酸化炭素排出権版粉飾決算がまかりとおることになる。
森林火災でどんなにCO2が排出されようが、その排出CO2は化石燃料消費による排出とは本質的に異なる。例えばバイオ燃料は植物由来燃料なのでCO2排出バランスシート上はカーボンニュートラルと見なされる。ならば、森林火災による排出もカーボンニュートラルと見なさなければならない。基本的に森林が蓄積した炭素はバイオ燃料と同じで、地表にありながら炭素を保蔵しているわけで化石燃料とは違う。化石燃料の場合、完全に地中に死蔵された二酸化炭素を排出して大気という“市場”に新たに供給されているのでカーボンニュートラルではない。
仮に森林が焼失しても、炭素本位制経済では、(炭素吸収)工場焼失、あるいは(炭素貯蔵)倉庫焼失と同じ扱いとなり、工場や倉庫という資本財の消失と同じだ。化石燃料の燃焼はフローによる排出(損失)なのに対し、森林焼失は資本の磨耗なのだ。
しかし、CDMという会計操作されると、会計的に全く異なる二種類のCO2がごちゃまぜにされ、“赤字”なのに“黒字”扱いされてしまう危険がある。赤字の経常損益に資本の増減を混ぜ合わせれば粉飾決算できるというわけだ。
これが認められれば、カリマンタンに限らず、排出権を獲得するために故意に熱帯林を燃やし、消失した熱帯林を復旧する活動をしますという名目でCDMを申請すれば、事実上無限の排出権を永続的に獲得できるようになる。
現在のCDMはいかにもいい加減だから、これは空想ではなく差し迫った課題である。
[追記]Cru氏からTBいただいたが、

通常、熱帯雨林はその存在自体がカーボン・ニュートラルなのではないかと思う。

というのはおかしい。上記のよう森林は炭素吸収源なのでカーボンネガティブだ。
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